怒れる11人のドラ男(前編)  投稿者:不死鳥今中
1955年の暑い夏、中日村最低裁判所である事件の裁判が行われた。 裁判には、村の良識ある男達が陪審員として選択された。
事件は、ある日の夜おきた。 被害者は野口という青年。 加害者として、ナベツネ商事の「エトー」と名乗る男が逮捕された。
容疑は、「エトー」と名乗る男が野口を撃ったとされるものだった。
陪審員には、立浪、井上、福留、山崎、李、種田、関川、川上、前田、正津、武田、が選ばれた。 裁判の日の午後、最低裁判所の陪審員室で、評決が行われていた・・・。

井上]この事件はもう、何も語ることはないでしょう。
    エトーは有罪、まあ、懲役15年ってとこでしょうかね?

関川]そうじゃのぉ。なにも疑うことはないよのぉ。エトーは有罪じゃ。

福留]ホンッとにナベツネ商事の連中はやることがなっとらん。
    なんで善良な市民である野口を撃ったんだか聞いてやりたいよ。

李 ]全くだ。野口を撃つなんて信じられない暴挙だ。有罪しかありえんね。

一同]う〜ん。

山崎]そういうことならさっさと評決しましょうか?

一同]異議な〜し。

山崎]では、エトーが有罪であると思う人は挙手願います・・・。
    てなわけで全会一致でエトーは有罪ときまりまし・・・

立浪]ちょっとまった!

山崎]へ?

立浪]ちょっと待ってくれ。

武田]なんだい立浪のだんな!
    こんなのチョロッとやってぶち込んじまえばいいんじゃないのか?

正津]そうだよ!ナベツネ商事のやつらなんか根っからの悪党さ!
    許しちゃおけないんだ!

立浪]いや、たしかにナベツネ商会の連中は金のためなら、
    なんでもやる最低のやつらだと思う。
    しかし、ちょっと腑に落ちないところがあるんだ。
    それだけは確認したいんだよ。

種田]はぁ?あんな奴らをなんでかばおうとしているのかな?
    あんなやつら、叩きのめしてやるって言っていたのは立浪のだんなだろうよ。

立浪]うん、・・・しかし。


立浪にはどうしても納得がいかない点があった。 7回裏、エトーに打たれて倒れた野口は、普通なら右打ちのエトーの打球に沿ってレフト側に倒れるはずなのに、なぜか野口はライト側に倒れていたのだ。 しかも、エトーが野口を撃ったときの目撃者はなく、音を聞いて駆けつけたらすでに野口は倒れていた、ということだった。 つまり、真犯人が他にいる可能性も否定できないのだった。