むっつりラーメン「野口」の逆襲 (No.3)  投稿者:不死鳥今中
野口は、まず昆布から出汁を取りはじめた。次に鶏がらを入れ、丁寧に沸騰させないよう、静かに煮込んだ。 次に鰯をいれ、強火にしたものをスープのベースにした。 麺は、かん水をほどよくきかせ、適温でやさしく寝かせた野口自慢の麺だ。 そして、チャーシューは脂身の多いこってりした豚肉をえらび、秘蔵のタレでことことと煮込み、そのタレを返しに使った。 具は、チャーシュー、なると、ねぎ、シナチク。 「・・・足りない!・・・何だっけ!・・・いったい。」 しばらくして野口は叫んだ 「ノリだっ!!」 野口はノリを忘れていたのだ。ナベツネ商会の強打者連中に気迫で押されてしまい、野口本来の持ち味であるノリを完全に忘れ去っていたのだ。 「どうやら、俺の役目は終わったな。」山田は野口に気がつかれないよう静かに去っていった。 野口は、できあがったラーメンを客とワニ顔に食べさせた。 「あ・・・。これは・・・なんと言うか・・・。」ワニ顔も忘れていた何かを思い出したようだった。 「こっちの方がうまい。」客もとうとう納得したようだった・・・。 それ以来、野口のラーメンは売れに売れて、とうとう自分の店を買い戻すことができたんだそうだ。 そして数ヶ月後、またワニ顔が野口の店にやって来た。 しかしそれは、客として本当のラーメンの味をあじわいたかったからだ。 「ほんとうのラーメンか・・・。」 ワニ顔は、目にコショウが入ったのか、少し、涙ぐんでいるように見えた。

 −完−